第 27 回 日本統計学会賞 |
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宮川 雅巳 氏、駒木 文保 氏 |
第 2 回 日本統計学会中村隆英賞 |
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若杉 隆平 氏、舟岡 史雄 氏、作間 逸雄 氏 |
第 18 回 日本統計学会統計活動賞 |
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一般社団法人 データサイエンティスト協会 |
第 18 回 日本統計学会統計教育賞 |
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林 兵馬 氏、島根県立大学・浜田市 総務部総務課・島根県 政策企画局統計調査課 |
第 16 回 日本統計学会研究業績賞 |
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本田 敏雄 氏、丸山 祐造 氏 |
第 15 回 日本統計学会出版賞 |
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北川 源四郎 氏・竹村 彰通 氏・内田 誠一 氏・川崎 能典 氏・孝忠 大輔 氏・佐久間 淳 氏・椎名 洋 氏・中川 裕志 氏・樋口 知之 氏・丸山 宏 氏 (共同受賞) (『教養としてのデータサイエンス(データサイエンス入門シリーズ)』) |
第 36 回 小川研究奨励賞 |
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佃 康司 氏、入江 薫 氏、石井 晶 氏、矢野 恵佑 氏 |
1979年 東京工業大学工学部卒業、1982年 東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程退学、1982年 東京工業大学工学部助手、1990年 東京理科大学講師、1993年 東京理科大学助教授、1994年 東京大学助教授、1996年 東京工業大学助教授、1999年 東京工業大学教授、2016年 東京工業大学工学院経営工学系教授、2022年 東京工業大学名誉教授 現在に至る。
宮川雅巳氏は、統計的品質管理を中心とする応用統計学分野において、第一線で活躍する研究者である。グラフィカルモデリングおよび構造的因果モデルの方法論研究に関しては日本国内のパイオニアとして、品質管理学・応用統計学をけん引してきた。品質工学分野に関しても、統計科学的観点から数多くの論文を執筆しており、他の研究者・実務家の追随を許さない理論系研究者である。同氏の研究のスタンスは「現実問題に応用できる(現実問題を解決できる)統計解析法」の開発を目指すものであり、その目的を達成するために、いち早く最先端の統計科学に目を向け、その普及・啓発・開発に貢献してきた研究者の一人であると言える。このような応用統計学の発展に対する多大な貢献は、日本統計学会賞にふさわしいものである。
[1] Miyakawa, M. (1984). Analysis of incomplete data in competing risks model. IEEE Transactions on Reliability, 33, 293 -296.
[2] Kuroki, M. & Miyakawa, M. (2003). Covariate selection for estimating the causal effect of control plans by using causal diagrams. Journal of the Royal Statistical Society: Series B, 65 209 -222.
[3] 宮川雅巳 (1997). 「グラフィカルモデリング」,朝倉書店.
[4] 宮川雅巳 (2000). 「品質を獲得する技術―タグチメソッドがもたらしたもの」,日科技連.
[5] 宮川雅巳 (2004). 「統計的因果推論―回帰分析の新しい枠組み」, 朝倉書店
1989年 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 修士課程 修了、1992年 総合研究大学院大学 数物科学研究科統計科学専攻博士課程 修了、1992年 東京大学工学部計数工学科助手、1995年 文部省統計数理研究所助教授、1997-1998年 デンマークAarhus大学理論統計学科、英国 Oxford大学統計学科 客員研究員、1998年 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻助教授、2001年-現在 東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 助教授、准教授、教授、2008-2018年 理化学研究所脳科理化学研究所脳科学総合研究センター学総合研究センター客員主管研究員、2017年-現在 東京大学数理・情報教育研究センター長、2018年-現在 理化学研究所脳神経科学研究センター数理情報学連携ユニットリーダー 現在に至る。
駒木文保氏は、理論統計学、とりわけベイズ統計学の予測理論において顕著な業績を挙げてきた。同氏は統計的推測において予測分布の性能を評価することが大事であることを早い時期から見出し、漸近理論の枠組みでベイズ予測が最適であることを示した。このことは世界的に高く評価されており、その後のベイズ統計学の発展に大きく寄与した。また、「数理及びデータサイエンス教育に係る教育強化」事業の東京大学における実施主体である数理・情報教育研究センターのセンター長を務め、同氏のリーダーシップのもと、さまざまな地域における大学や産業界との連携も含めて、データサイエンス教育の発展が総合的に進んでいる。以上、同氏は統計学の理論研究ならびに人材育成において多大な貢献をしており、日本統計学会賞にふさわしい人物である。
[1] Komaki. F. (1996). On asymptotic properties of predictive distributions, Biometrika , Vol.83, 299-313.
[2] Komaki, F. (2001). A shrinkage predictive distribution for multivariate normal observables, Biometrika , Vol. 88, 859-864.
[3] Komaki, F. (2006). Shrinkage priors for Bayesian prediction, The Annals of Statistics , Vol. 34, 808-819.
[4] Komaki, F. (2011). Bayesian predictive densities based on latent information priors, Journal of Statistical Planning and Inference, Vol. 141, 3705-3715.
[5] Komaki, F. (2021). Shrinkage priors for nonparametric Bayesian prediction of nonhomogeneous Poisson processes, IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 67, 5305-5317.
1971-1986年通商産業省1985年同省通商調査室長、 1986-1989年 信州大学経済学部助教授、教授1988年 経済学博士(東京大学)、1989-1992年 通商産業省 国際企業課長、環境政策課長、1992-2004年横浜国立大学 経済学部教授 、同学部長、同大学副学長、同大学大学院国際社会科 学研究科教授、1994-1997年通商産業省通商産業研究所特別研究官、2003-2007年 総務省統計審 議会専門委員、2004-2010年 慶應義塾大学経済学部教授、2006年- 横浜国立大学名誉教授、2006-2016年 独立行政法人経済産業研究所研究主幹、プログラムディレクターシニアリサーチアドヴァイザー、2007年総務省統計審議会委員、2007-2012年 京都大学経済研究所教授、2012年- 京都大学 名誉教授、2013-2015年 学習院大学経済学部特別客員教授、2015年 新潟県立大学大学院国際地域学研究科教授、2017年- 同大学理事長・学長、現在に至る。
若杉隆平氏は、経済統計の研究及び関連する分野の分析、理論、手法の発展において数多くの顕著な業績がある。同氏は、国際貿易・直接投資の研究分野、研究開発と技術革新に関する研究分野の両分野において、内外の経済統計、企業別ミクロデータ、独自のサーベイによるデータを駆使することによって実証研究に取り組み、企業の研究開発投資と新技術の開発等のメカニズムを解明する上で多くの業績をあげてきた。また同氏は、国際貿易・直接投資の分野での実証研究において、日本の国際経済研究をリードする優れた業績をあげてきたことによって高く評価されている。同氏には研究業績に加えて、経済統計の実務においても業績がある。経済産業省「海外事業活動基本調査」「外資系企業動向調査」の両統計調査の実施、改善、普及、利用の拡大等の任務を担い、実践的立場からも経済統計の発展に貢献してきた。以上のように、同氏には経済統計の研究及び実務並びに関連する分野の分析、手法等の発展において顕著な業績があることから、若杉隆平氏は日本統計学会中村隆英賞の受賞にふさわしい。
[1] 若杉隆平 (1986)『技術革新と研究開発の経済分析』 東洋経済新報社
[2] 若杉隆平 (2007)『現代の国際貿易-ミクロデータ分析-』岩波書店
[3] 若杉隆平 (2011)『現代日本企業の国際化-パネルデータ分析-』岩波書店
[4] Wakasugi, R. Ed. (2014) ”Internationalization of Japanese Firms: Evidence from Firm-level Data” Springer
[5] Wakasugi, R., et al. (2019) “Individual characteristics, behavioral biases, and attitudes toward foreign workers: Evidence from a survey in Japan,” Japan and the World Economy
1976年 東京大学大学院経済学研究科 理論計量経済学専攻博士課程 単位取得退学、1981年 信州大学経済学部 助教授、1989年 同大学経済学部教授、1992-2000年 同大学評議員、1998-2000年 信州大学 経済学部長、2012年-現在 信州大学 名誉教授、2012-2017年 (一財) 日本統計協会専務理事、その他一橋大学経済研究所 客員教授、経済企画庁経済研究所客員主任研究官など
【政府審議会 委員等の活動】
2007-2009年 統計委員会委員、1998-2007年 統計審議会委員、2003-2009年 国土審議会特別委員、2002-2007年 内閣府経済社会総合研究所アドバイザリーグループ委員、1997-1999年 学術審議会 専門委員、1995-1996年 電気通信 審議会 専門委員 等
舟岡史雄氏は、大学院に在籍していた時に中村隆英教授の指導を受け、その後の研究の方向に大きな示唆を得ている。同氏は、中村教授が主査を務めた総務省統計局や大蔵省の研究会および著書の共同執筆等を通して、統計学は課題解決に資することに大きな役割を持つもので空理空論であってはならないとの薫陶を受けて研究を進展させてきた。同氏は各種のマイクロデータを駆使して実証分析に取り組み、従来の通念とは異なる新たな事実を発見しマイクロデータの活用の有用性を積極的に発信した。それらの研究成果が高く評価されたことにより、政府統計の個票データの利活用の門戸が開かれる契機となったことに対する貢献も大きい。同氏は研究業績に加えて、公的統計の実務において優れた貢献があり、政府統計は公共財であるとの考えを確立し、我が国の統計の将来の指針を提示した。以上のように、同氏には経済統計の分野における実証分析および公的統計の改善・発展に関し多年にわたる顕著な業績があり、舟岡史雄氏は日本統計学会中村隆英賞の受賞にふさわしい。
[1] 舟岡史雄 (1978) 「物価上昇と個人消費」『経済評論』(日本経済評論社)
[2] 舟岡史雄 (1986) 「企業統計」『日本経済と経済統計』林周二・中村隆英編(東京大学出版会)
[3] 舟岡史雄・鮎沢光明 (2000) 「高齢者の同居の決定要因の分析―家族の生活状況と保障機能―」『家族・世帯の変容と生活保障』(東京大学出版会)
[4] 舟岡史雄 (2001) 「日本の所得格差についての検討」 『経済研究』(一橋大学経済研究所)
[5] 舟岡史雄 (2003) 「企業行動の多角化の実体とその成果―事業所・企業・企業グループについての実証分析―」『 講座ミクロ統計分析第4巻 企業行動の変容』松田芳郎・清水雅彦・舟岡史雄編著(日本評論社)
[6] 舟岡史雄 (2008) 「各国の統計法制度とわが国の統計改革」『社会・経済の統計学』 (21 世紀の統計科学 第1巻) (東京大学出版会)
1978年 一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、1978年 一橋大学経済学部助手(特待生)、1979年 専修大学経済学部講師、 1982 年 同助教授、1988年 同教授、2021年 同名誉教授 現在に至る。
1984-2001年 統計審議会専門委員 (経済指標部会、国民経済計算部会)、1994年 国民経済計算調査会議専門委員、2004年 国民経済計算調査会議委員、2007-2009年 統計委員会専門委員
作間逸雄氏は、国民経済計算体系(以下SNA)を中心に経済統計全般に渡って多様な分野で重要な学問的・実務的な貢献を行った。1968SNAから脈々と受け継いできた国民経済計算体系を引き継ぎながら、経済学全般に多様に展開する上で不可欠な業績を築いた。2008SNAの際も、大量にある新規用語の一つ一つを定義し、今日の数千に及ぶ国民経済計算周辺分野の用語の翻訳や定義は同氏によって成された。SNAの影響力は内閣府にとどまらず、日本銀行、財務省、総務省、都道府県と政令市の各部局など、SNAマニュアルを通して同氏はこれまで数千人に直接・間接的に貢献してきた。マニュアル以外でも実務上の概念で、国民経済計算調査会議や統計委員会専門委員も含めて数多くのアドバイスを通じて、日本の国民経済計算の計算概念に重要な貢献をしてきた。経済学における生産概念に関する一連の研究は、同氏の代表的な研究成果となっている。さらに同氏は、世界銀行・OECDによる購買力平価(PPP)プロジェクトを確立し、世界に根付かせたという貢献も今日高く評価される。以上により、同氏は日本統計学会中村隆英賞の受賞にふさわしい。
[1] Sakuma, I. (1977) “Closedness of Convex Hulls”, Journal of Economic Theory, 14 (1) pp.223-227
[2] 作間逸雄、倉林義正 (1980) 『国民経済計算』東洋新済新報社
[3] Sakuma, I. et al. (1994) “New Index of R&D Purchasing Power Parities for International Comparisons,” Research Evaluation, 4 (3). pp.161-169
[4] 作間逸雄ほか (2003) 『SNAがわかる経済統計学』有斐閣
[5] Sakuma, I. (2013) “The Production Boundary Reconsidered.” Review of Income and Wealth 59 (3).pp.556-567
[6] Sakuma, I. (2015) “Will the Concept of Goodwill Go Well with National Accounting” Eurona, 1/2015, pp.51-65
[7] Sakuma, I. et al. (2018) “The Value Added and Operating Surplus Deflators for Industries: The Right Price Indicators that should be Used to Calculate the Real Interest Rates” Statistical Journal of the IAOS, 34(2), pp.235-253
2012年11月 有志による新団体設立に向けた活動スタート、2013年「社会のビッグデータ化に伴い重要視されているデータサイエンティスト(分析人材)の育成のため、その技能(スキル)要件の定義・標準化を推進し、社会に対する普及啓蒙活動を行う。」「分析技術認定(レベル認定)などの活動を通じて、分析能力の向上を図るための提言や協力を惜しまない支援機関として、高度人材の育成とデータ分析業界の健全な発展に貢献する」ことを目的として一般社団法人データサイエンティスト協会を設立。現在に至る。 代表理事 草野 隆史。2022年1月幹事会員102社、大学・研究機関・自治体会員9団体、特別会員8団体。
一般社団法人データサイエンティスト協会は、データサイエンティストに必要となるスキル・知識を定義し、育成カリキュラム作成、評価制度の構築などを行っている。2021年にはデータサイエンティストとして必要なスキルの骨格を示したスキルチェックリストver.4を公開し、データサイエンス実務における統計学の重要性を示した。本スキルチェックリストは大学・研究機関でのデータサイエンス授業のシラバス策定や企業のデータサイエンティスト育成において指針となっており、統計学の実社会への適用、応用に貢献している。同協会が主催しているデータサイエンティスト養成講座や課題解決型人材コンテストなどにより、多くの企業が取り組むDX推進において、データサイエンス分野から統計学の重要性を広く社会に示す役割を担っている。同協会のこのような活動は、統計学及び統計を支える基盤の充実・高度化を通じた研究・教育環境の整備に多大な貢献しており、日本統計学会統計活動賞にふさわしいものである。
2011年大阪教育大学 教育学部教養学科数理科学専攻 卒業、2013年 大阪大学大学院 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 修士課程 修了、2014年 京都府立西舞鶴高等学校教諭、2017 年– 神戸大学附属中等教育学校 教諭。現在に至る
2020年- 神戸大学数理・データサイエンスセンター 客員研究員(高大連携)
林兵馬氏は、中学校および高等学校数学科・情報科における学習指導要領改訂に伴い、取り扱いが飛躍的に拡大した統計・データサイエンス教育の授業デザイン実践および神戸大学との高大連携・(株)日立システムズとの産学連携事業の推進において顕著な実績を上げている。同氏は所属校において、2020年度から学校設定科目「データサイエンスⅠ」「データサイエンスⅡ」のカリキュラム開発責任者として携わっており、神戸大学数理・データサイエンスセンターの協力を得ながら、情報科と連携して数学科の授業でどのように統計・データサイエンス教育を指導するかを実践している。また、生徒の統計的課題研究の指導にも熱心に取り組んでおり、指導した生徒がISLP Poster Competition younger division 1st prizeなどさまざまなコンペティション等において賞を獲得している。このような同氏の活動は、高大連携や産学連携のモデルケースを形成し、今後の中等教育および高大連携・産学連携における統計・データサイエンス教育の発展にますます寄与することが期待され、本学会統計教育賞に相応しいものである。
島根県立大学、浜田市、島根県が連携して取り組んだ「学生調査員育成事業」は、学生に統計調査の座学やマナー研修を積ませた上で調査員として活動することを通じて、統計知識の習得のみならず、社会参加のきっかけを提供する、全国でも斬新で先進的な取組みである。この事業は「国勢調査100年を成功させるデータサイエンス議員連盟」で高く評価され、このような取組みを横展開すべき旨が総務大臣に提言された。本事業の授業モデルケースとしての標準化・最適化が進めば、公的統計に対する国民の回答協力意欲の向上にもつながる。また身近な統計調査としてのデータ利活用にも展開でき、ひいては統計教育の発展に寄与することに期待できる。この精力的な取組みは、統計教育普及に貢献する事業として敬意をもって高く評価することができ、島根県立大学・浜田市・島根県の三組織は日本統計学会統計教育賞にふさわしいと言える。
[1] Ming-Yen Cheng, Toshio Honda, Jialiang Li. Efficient estimation in semivarying coefficient models for longitudinal/clustered data. The Annals of Statistics, (2016), 1988-2017. |
[1] Yuzo Maruyama and William E. Strawderman (2022). On admissible estimation of a mean vector when the scale is unknown, accepted for publication in Bernoulli |
Koji Tsukuda. (2019), On Poisson approximations for the Ewens sampling formula when the mutation parameter grows with the sample size. The Annals of Applied Probability 29(2), 1188-1232. |
佃康司氏は、これまで確率分割に関する理論研究に取り組み、先駆的な成果を挙げてきた。特に確率分割の基本モデルであるEwens抽出公式(ESF: Ewens sampling formula)に従う確率分布について、ふたつのパラメータが同時に大きくなる設定のもとでの基礎的な結果を確立したことの意義はきわめて大きく、緻密な誤差評価と関数空間上の弱収束に基づいて構築された漸近理論は、今後の標準となると言える。ESFは応用確率論・統計学・数理集団遺伝学にとどまらず、確率分割の基本モデルとして多岐にわたる科学分野で議論されてきた重要なテーマである。高水準かつ柔軟な数理基盤を構築した対象論文は、ESFの統計解析に関する研究の基礎的かつ先駆的な研究成果であると評価でき、日本統計学会小川研究奨励賞にふさわしいものである。 |
[1] Irie, K., Glynn, C. and Aktekin, T. (2022). Sequential modeling, monitoring and forecasting of streaming web traffic data. Annals of Applied Statistics, 16, 300-325. |
入江薫氏は、状態空間モデルやカウントデータに対する分析手法を、ベイズ統計学の観点から研究を行なっている。論文[1]では、高頻度に観測されるカウント時系列データに対して、潜在状態をリアルタイムにモニタリング・予測することが可能な分析手法を開発し、ウェブサイトのアクセス数のデータに対する適用例を与えている。論文[2]では、異質な平均構造を持つカウントデータに対して、縮小型事前分布に関する理論的結果と、その理論に基づいた新しい事前分布のクラスを与えている。両論文ともに、カウントデータに対する新しいモデリングの枠組みを提示したもので、実応用における問題意識を動機付けとして、ベイズ統計学の視点で新しい方法論を開発した。両論文はそれぞれ応用統計学およびベイズ統計学のトップジャーナルに掲載されており、日本統計学会小川研究奨励賞にふさわしい成果であると言える。 |
2014年 筑波大学大学院数理物質科学研究科数学専攻博士前期課程修了、2017年 同専攻博士後期課程修了(博士(理学))、2017年 東京理科大学理工学部情報科学科 助教、2021年 東京理科大学理工学部情報科学科 講師 現在に至る。 |
[1] Aki Ishii, Kazuyoshi Yata, Makoto Aoshima (2022). Geometric classifiers for high-dimensional noisy data. Special Issue: 50th Anniversary Jubilee Edition, Journal of Multivariate Analysis, 188, 104850. |
石井晶氏は、従来の多変量解析では扱うことのできない高次元小標本データに、高次元統計解析の新たな理論と方法論を構築し顕著な成果をあげてきた。論文[1]は、トップジャーナルJournal of Multivariate Analysisの50周年記念特別号に招待論文として掲載される。論文[3]は、学術誌において奨励論文賞を受賞している。論文[4]は、Springerlink 2019 highly downloadedの統計学Top10にランクインし、JJSDの広報に大きく貢献している。Debashis Paul教授(カリフォルニア大学デービス校)などのランダム行列理論や高次元統計理論の世界的権威からの招待などによる国際会議での多数の招待講演の実績は、本論文の質の高さを明らかに示している。また、最近では先端材料や宇宙物理など諸分野からも注目され、新たな成果が生まれている。このように本論文は、同氏の持つ高い国際性と学際性に基づいたものであり、日本統計学会小川研究奨励賞にふさわしいと言える。 |
[1] Edward George, Gourab Mukherjee, and Keisuke Yano (2021) Optimal Shrinkage Estimation of Predictive Densities under α-divergences, Bayesian Analysis, vol. 16, 1139-1155 |
矢野恵佑氏は、これまで高次元や無限次元モデルにおける分布予測理論を構築してきた。受賞対象に挙げた4編の論文では、近年の応用上よく現れる高次元・無限次元モデルに着目し、それらのモデル下でのベイズ予測分布の構築およびその基礎について議論している。論文[4]は、近年のデータ環境を踏まえた、関数自由度をもつモデルでのベイズ予測分布の構築を議論した論文であり、関数空間におけるミニマックス最適性を証明し、提案する予測分布の効率的な実装法を示している。論文の中で提案された手法は、いずれも取り扱いと実装の面で容易性を勘案し工夫されたものである。それにより、ウイルス感染のマーカー遺伝子の同定や、東京都のスリ犯罪件数の予測といった実問題に適用され、有用性が確認されていることは高く評価できる。これらの論文は、分布予測の分野における重要な貢献により、日本統計学会小川研究奨励賞に相応しいものである。 |