2017年 6月23日
赤平 昌文(筑波大学)
この度, 代議員会での選出を経て, 会員による選挙の結果に基づき2017年6月の理事会において日本統計学会会長に選出されました. 理事長をはじめ理事, 監事, 代議員の方々の御協力を得ながら, 微力ではありますが学会のために尽力したいと思っておりますので, よろしくお願い申し上げます.
2011年の東日本大震災, それに伴う原発事故を契機に, 社会には大学, 研究機関, 学協会等を含むアカデミアに対する不満, 不信が生じました。特に, アカデミアが震災以前もその直後も社会に対して必要な情報を提供してこなかったことがその一因です. それに危機感を持った日本学術会議をはじめとするアカデミアは失われた信頼の回復に懸命でしたが, まだ十分とは言えない状況に見えます. その際、社会に学問には限界があるということが十分に伝わっていないのではないかという懸念を感じます. アカデミアの側が情報発信の際に受け手にサイエンスが万能であるかのような印象を与えかねないような場面もあるように思います. その限界を示すものが前提条件です. 数学ほど厳密ではなくとも, 常にそのことに留意することは大切ではないでしょうか. 特に, 統計学のような学際的で応用も広い学問では重要で, それを怠ると情報発信の際に誤解を招きかねません.
日本統計学会は統計関連学会連合に参加し, 連合大会も開催されて連携が図られています. その意味では異分野との協働は比較的行われていますが, まだ十分ではないようにも思えます.さらなる異分野との協働によって意外な成果も期待されるのではないでしょうか.
日本統計学会の欧文の学会誌が統計関連学会連合の新しい欧文ジャーナルとして発展的に継承されることになりました. ジャーナルは学会として重要な情報発信の場ですので, 連合の学会とも連携して, これが軌道に乗るようにしたいと思います. 最近は、国の財政難もあって研究費の確保が大変難しくなりこの状況を少しでも改善するために他学会等とも協力して当たりたいと考えております. 日本統計学会が国際的にもさらに発展するように努めたいと思っております. 会員の皆様の御支援をよろしくお願い申し上げます.
2017年6月23日
西郷 浩(早稲田大学)
このたび、日本統計学会理事長を拝命しました。錚々たる歴代理事長に比して非力であることは否めません。しかし、幸いなことに、わが国の統計学界を代表する赤平昌文先生を会長にお迎えすることができました。赤平会長のリーダーシップのもとに、日本統計学会の発展に努める所存です。どうぞよろしくお願いいたします。
私が学会の運営のお手伝いを比較的長く経験しています。それを通して、研究者として著名な先生がたが、学会の運営にも真摯に取り組んでおられる姿を目の当たりにして参りました。初めてお手伝いしたのは、1992年から3年間、広報に携わったときでした。著作でしか名前を存じ上げていなかった先生がたが、熱心に学会の運営について議論していることに、感銘を受けました。2005年から2年間は、大会委員会委員(プログラム委員会委員)として理事会に出席しました。ちょうど連合大会が軌道に乗り始めた頃で、複数の学会が協働で統計の研究活動を進める意気込みを感じました。そして、学会が法人化された2011年から3年間、理事(大会担当、庶務担当)を務めました。とくに、庶務理事は、法人組織を運営していくことの大切さや難しさを実感する機会となりました。今回は、図らずも理事長として学会運営のお手伝いをさせていただくことになります。
以下、今後の学会にとって重要と私が思う項目について述べます。
第1に、統計関連学会連合が新しく発行する欧文ジャーナルを日本統計学会が支援していく必要があります。社員総会(2017年6月10日)で決定されたとおり、日本統計学会の欧文誌は連合の新ジャーナルに発展的に吸収されます。評価の高いジャーナルをわが国から発行することによって、国内外の研究を活発化することが新ジャーナルの目的の一つとされています。高い評価を得るためには、質の高い論文の継続的な掲載が必要です。日本統計学会には、新ジャーナルに参加する学会のひとつとして、多くの会員が論文を投稿することが期待されています。
第2に、データの科学的な作成・分析に対する社会の要望に応えていく必要があります。技術革新のスピードはすさまじく、従来とは性質の異なるデータの作成・分析への需要はこれまでになく高くなっています。それとは裏腹に、プライバシー意識の高まりとともに、社会に不可欠な公的統計の作成がますます困難になっており、その解決へ学会の協力が望まれています。
第3に、わが国の統計教育に学会が協力する必要があります。これまでにも、学会は初中等教育・高等教育における統計教育に尽力してきました。たとえば、高校数学に「データの分析」が含められたことや、大学レベルの統計教育に関する統計教育大学間連携ネットワーク(JINSE)の活動は、その例といえます。しかし、諸外国に比べて、わが国の統計教育には改善の余地が少なくないと思えます。教材の開発などの面で学会への期待は大きいといえます。
この他にも、連合大会・春季集会における国際セッションの常設など、重要な項目がたくさんあります。微力ながら実現に向けて努力いたします。